経理担当者必見!管理会計と財務会計の違いとは?メリット、デメリットまで徹底解説。
経理業務をしていると、「管理会計」「財務会計」というワードが出てくることがあります。
この二つのワードは似ているようで、全く異なる会計手法です。
それぞれの会計手法について、わかりやすく解説していきます!
この記事でわかること
- 管理会計と財務会計の違い
- 管理会計のメリット、デメリット
- 財務会計だけではなく管理会計も行う理由
1. 管理会計とは?
管理会計とは、経営者が今後の戦略を決めたり、意思決定をサポートするために必要な数字を算出する会計手法のことを指します。
この会計手法は、主に企業の内部向けの数字で、日常的な経営状況や中長期的な計画を最適化するために用いられます。
では、具体的にはどのようなことをするのでしょうか?
管理会計の具体的な業務内容を解説していきます。
1.1 管理会計の具体的な業務内容
経営分析
経営分析では、売上、コスト、市場動向などのデータを基に、企業の経営情報を評価し、どの戦略が効果的かを判断します。
この分析を通じて、経営者は事業の成長機会を見極め、リスクを管理するための具体的な行動計画を立てることができます。
予実管理
予実管理とは、企業の財務状態を健全に保つために重要です。
具体的には、予想される収益と支出を事前に計画し、計画通りに進んでいるかどうか、定期的に実績との比較を行います。
このプロセスは、資金の適切な予算配分と効果的なコスト管理を可能にし、財政的な安定を促進します。
原価管理
原価管理とは、製品やサービスの原価を正確に把握し、無駄を削減することです。
価格設定や、より生産性の高い手法の選択などに直接影響を与え、企業の利益向上に貢献します。
セグメント別損益管理
セグメント別に損益管理を行うことで、企業は各事業部門の財務成績を個別に評価することができます。
これにより、どの事業部が最も利益を生んでいるか、またはどの部分に予算をさらに投入すべきかを明確にすることが可能です。
1.2 管理会計を行うメリット・デメリット
管理会計を行うことのメリットとデメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。
それぞれ以下のようなメリットとデメリットが挙げられます。
- 即時性と柔軟性
- 管理会計はリアルタイムで必要な数字を算出し、経営者が現状に応じて迅速に対応できるようにします。
- 戦略的意思決定の支援
- 経営の戦略立案や予算計画、リスク管理に必要な詳細情報を提供します。
- 効果的なリソース配分
- 予算を効率的に配分し、最大の利益を得るための意思決定をサポートします。無駄な支出を抑え、事業の収益向上させることが可能です。
- 初期コストと維持費
- 管理会計システムの導入と維持には高額な費用がかかることがあり、特に小規模なスタートアップにとっては負担となる場合があります。
- 複雑さと専門知識要求
- 管理会計は、データの収集、分析、解釈に専門的な知識が必要とされるため、適切なスキルを持つスタッフが不可欠です。
- 内部焦点の限界
- 管理会計は内部の意思決定に焦点を当てているため、外部ステークホルダーの要求や視点を十分に反映しないことがあります。
2. 財務会計とは?
一方で、似たような言葉に財務会計という会計手法があります。
似ているようで管理会計とは、目的も内容も全く異なるものです。
財務会計とは、企業の外部ステークホルダーへの財務報告を目的とした会計手法のことです。
投資家、債権者、政府機関などの外部の利害関係者に対して、企業の財務状態を公正かつ透明に報告することが求められます。
2.1 財務会計で作成する資料の種類
財務会計では、決まりの則って必要な書類を作成します。
これらを財務諸表と呼びます。
具体的にどのような財務諸表を作成するか解説します。
賃借対照表(B/S、バランスシート)
賃借対照表とは、ある時点における、企業の資産、負債、および株主資本の状況を示す書類のことです。
この報告書は、「この時点でいくら借金があるのか?」「いくら資産があるのか?」等々、いわゆる企業のお財布状況を表します。
キャッシュフロー計算書
キャッシュフロー計算書は、特定の期間における現金の流入と流出を詳細に報告する書類です。
この情報は、企業の現金管理と流動性の状況を把握するために不可欠です。
損益計算書(P/L)
損益計算書とは、特定期間内の企業の収益と費用を示し、最終的な利益または損失を計算します。
この情報は、企業の経済的成果と収益性の評価に非常に重要です。
「ある期間にいくら儲けたのか?」「ある期間にいくら支払ったのか?」等々、一定の期間内における利益とかかった費用を表します。
3. 管理会計と財務会計の違い
管理会計と財務会計は似て非なるものです。
違いをまとめましょう。
項目 | 管理会計 | 財務会計 |
---|---|---|
目的 | 内部の意思決定を支援すること。経営者が戦略的な決定をくだせるようなような形式で会計数字を算出 | 株主など外部の利害関係者に対して企業の財務状況を報告すること。 |
対象者 | 主に、経営者や部門責任者 | 主に、投資家、貸し手、株主、税務当局など、企業外部の人々 |
報告頻度 | 必要に応じて柔軟に行われることが多く、リアルタイムでの数字も必要 | 通常、年に一度や四半期ごとなど、定期的に実施 |
情報の種類 | 将来の予測や計画に役立つよう設計されたデータ | 過去の取引に基づく事実を基にしたデータを一般に認められた会計原則に基づいて整理されたもの |
4. 財務会計では経営の意思決定ができない理由
財務会計が提供する財務諸表は、主に過去のデータに基づいています。
そのため、管理会計のような未来の予測や柔軟な意思決定には向いていません。
また、外部向けに標準化された形式で報告されるため、内部で必要とされる詳細な分析情報や即時性を欠くことがあります。
これにより、経営者が直面する現実的な問題や迅速な対応が求められる状況に対して、十分な情報を提供することが財務会計では難しくなります。
その結果、コストや時間をかけてでも、財務会計とは別で管理会計を行う企業が多くあるということです。
まとめ
今回は、管理会計と財務会計の違いについて解説しました。
それぞれの会計手法が企業運営にどのように役立つかを理解する手助けになればと思います!
最後にポイントをおさらいしましょう。
- 管理会計とは、経営者が今後の戦略を決めたり、意思決定をサポートするために必要な数字を算出する会計手法のこと
- 財務会計とは、企業の外部ステークホルダーへの財務報告を目的とした会計手法のこと
- 管理会計は未来のための手法、財務会計は過去の実績を報告するための手法